戦後横浜野毛界隈 nogelog

大正生まれが野毛界隈を語る。

凶器の隠し場所

 昔のパンツは紐がついており、前で結ぶようになっていた。ある夏の日「屋台でチンピラが暴れている。」と交番に駆け込まれた。竹さんが駆け付けたところ、屋台の中で怒鳴り声が聞こえた。竹さんが「静かにしろ!」と一喝すると、「なにィ、ポリ公」と言いながら、一目見てポン中ヒロポンという覚せい剤中毒者)とわかるパンツ一枚のヒョロヒョロ男が屋台から出て来た。竹さんは、男がパンツ一枚のため凶器を持っているとは思わなかった。ところが、男が右手をうしろにまわした途端、パンツの中からキラリと光る包丁を取り出して竹さんの腹をめがけて突きかかった。竹さんは咄嗟にうしろに飛び退きながら、両手で男の手首を掴んだ。男が手首を必死で動かすと、包丁の先が竹さんの腹スレスレに上下左右する。竹さんは夢中で男の手首を押しながら捻り潰し、包丁を取り上げて逮捕したが、後で竹さんは、「いきなりだったから逮捕できたのであって、身構えられたら、拳銃を使っただろう。お互いに無事でよかった。それにしても男は、パンツの中に包丁を入れて、よく尻を切らなかったものだ。」とおも思った。それからの竹さんは、紐のパンツと怖いもの知らずのポン中を警戒した。また、命拾いをした竹さんは、いつもサボッテいた武道の稽古に出席するようになり、とくに逮捕術の稽古を熱心にするようになった。

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