戦後横浜野毛界隈 nogelog

大正生まれが野毛界隈を語る。

経済取締り

 敗戦後間もないころは、経済統制されていない物資はないと言っても言い過ぎでない。警察には経済係という闇物資取締りの専門係があるが、人手不足に加え、闇物資に頼らなければ生きられない時代では、ときどき行われる米軍の一斉取締りに協力するのが精一杯なのだ。ある日、米軍MPがジープで交番にやってきて、野毛の闇市の取締りをすると言う。MPと日本警察官が協力して取締りをするわけだが、主体は、やはり日本警察官だった。だが、占領軍絶対の時代だから、米軍物資を売っている人びとは、蜂の巣をつついたように商品を隠した。竹さんが気にかけたのは、錦橋通りの中程で細ぼそと喫茶店を営んでいる幼い一人娘を抱えた戦争未亡人の店だった。「母親が捕まると生きて行けないだろう。」と考えた竹さんは、真っ先にその店に飛び込み、「一斉だ、砂糖などないな?」と言って表にでたとき、MPが来た。竹さんがMPに「OK」と言うと、MPは、「OK」と答えて一緒に交番にひきあげた。結局、その日に捕まったのは、本署経済係と米軍幹部が行った大きな料亭だけだった。竹さんは、生きるための闇と、金儲けのための闇とは違うと考えていた。
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