戦後横浜野毛界隈 nogelog

大正生まれが野毛界隈を語る。

鉄火場の防御体勢

 鉄火場の手入れをはじめて体験した竹さんは、鉄火場の防御体勢に驚いた。表の入口は三段階に固め、それぞれ見張りが置かれているのだ。裏側は猫でも登り降りできそうもない険しい崖であり、更に有刺鉄線を張り巡らせて、何人の出入りも許さない体勢だ。外側の防備は、この位だが、家の中の防備には驚かされた。柱にロープが結わえてあり、警察に踏み込まれたときに、そのロープを引くと、鉄火場の屋根がパッと左右に開き、屋根伝いに逃げられるようになっていたのだ。手入れのときの博徒の行動は目を見張る程すばしこかった。彼等の鉄の掟がそうさせたのか、手入れのとき、警察官の「それまでだッ!」の声に、柱のロープがサッと引かれた。同時にパッと開いた屋根に飛び付いて逃げようとする堅気?の客人達、それを逃がそうとして警察官の前に立ちふさがる博徒達、その光景は、さながら映画の四十七士の討入りシーンそのものだった。堅気の客人は必ず守らなければならない博徒の掟を守りきれずに、堅気の客人を逮捕されたためか、その鉄火場はたちまちつぶれてしまい、身内は、ちりぢりとなり、それぞれ堅気になったとのことだ。それにしても、あの要塞の攻撃によく成功したものだ。 f:id:nogelog2014:20140902112717:plain