戦後横浜野毛界隈 nogelog

大正生まれが野毛界隈を語る。

美女の死体は生きていた

 クリスマスの早朝、「伊勢山皇大神宮裏参道で若い女が死んでいる」と届出があった。管轄違いだが、死んでいるというのでは一大事だ。竹さんは、本署に報告して同僚四人と現場に駆けつけたところ、皇大神宮裏参道の階段に真っ白いドレスを着た美女が両足を開き、仰向けに倒れている。竹さん達は女性には手を触れず、現場を立入禁止にして管轄署員の到着を待った。間もなく管轄署の当直主任が刑事、鑑識などの殺人事件対応のスタッフを連れて到着した。竹さん達は、「ご苦労さんです。」と業界用語の挨拶をして引継いだ。当直主任の警部補は、「ヤラレテないか。」と言ってドレスの裾をめくって覗き込み、「ノウパンだ。」と言ったとき、なんと、美女の股間はシュウッと高く潮を吹きあげ、警部補の顔はビショ濡れになった。警部補は、「ヒャーッ、生きてるじゃネェか。ションベンかけられた。」と言って、手袋をした両手で顔を拭いた。竹さん達はクックッと必死で笑いをこらえ、現場を離れた途端、堰を切ったように爆笑した。それにしても気の毒だったのは管轄署員だ。おかしくても笑えず、死ぬ思いで笑いをこらえただろう。美女は米軍のクリスマス・パーティで泥酔した近所に住む夜の女だつたが、死体に見えたのが幸運だったわけだ。もし、ほっとかれたなら本物の死体になり潮も吹けなかっただろう。
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