戦後横浜野毛界隈 nogelog

大正生まれが野毛界隈を語る。

棚ぼた

 竹さんが、巡回中に立ち寄った桜木町交番から出たとき、錦橋の上で若者が酔っ払いを殴り倒し、上着のポケットを探り始めた。酔っ払いは泥棒、泥棒とわめいている。竹さんは、スッと近付き若者の手を掴んだ。若者は必死で竹さんの手を振り払い、盗んだ紙幣を空中に投げ上げて脱兎の如く逃げ出した。竹さんは、生まれつき?のノロマのうえ、真冬の夜のため、防寒外套を着て米軍払い下げの脚半付きのドタ靴を履いている。一方若者は作業服に運動靴という軽装である。おまけに空中に投げられた紙幣がヒラヒラと舞っている。これも犯人の悪知恵なのだ。竹さんは交番の方に向かって「拾ってくれ」と叫んでドタドタと犯人を追いかけた。犯人はグングン遠ざかる。その格好がおかしかったらしく、夜の女達が笑い転げている。夢中で追いかける竹さんに恥かしいなんて気持ちはない。でも、犯人を見失ってしまい。疲れはてた竹さんは料亭の壁にもたれてハアハアと荒い息をしていた。ところが頭上の屋根からも荒い息が聞こえる。犯人は屋根にいる?竹さんは息をひそめた。犯人の息だけが聞こえる。犯人は、しばらく休んだあと、下の竹さんに気付かず、竹さんのそばに飛び降りたので、竹さんは組み付いて逮捕した。後日、ノロマの竹さんは強盗犯人スピード検挙?で警察本部長から表彰された。

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