戦後横浜野毛界隈 nogelog

大正生まれが野毛界隈を語る。

大泥棒の悪知恵に学ぶ

 悪い奴は大胆で頭もいい。あるとき、竹さんは本署から「大山一郎(仮名)という大泥棒が風太郎の中にいるから、見つけて連れてこい。」と命令された。その男は盗んだ品物を当時の国鉄チッキで桜木町駅に送り、その引換証を売っているとのことだ。手ぶらで歩けば職務質問はまず受けない。よく考えたものだ。竹さんは、とにかく風太郎の姿になって彼等の群れに入り込んだ。だが、写真のような本人を見分ける資料はなく、雲をつかむような仕事だ。親しい風太郎に『大山一郎知ってるか』と聞き歩いていると、一人の若者が、「あいつは長者橋の宿船にいるよ」と言ったので、その若者を連れて宿船に行った。若者が「大山一郎いるか」と聞くと、宿泊者は答えず、ポカンとしている。それからの竹さんは、その若者と毎日大山を探し歩いた。ある日、顔見知りの風太郎から「旦那、毎日大山と歩いているが何かあったかね?」と聞かれた。竹さんはガクッときた。なんと尋ねる大山は、その若者だったのだ。翌日、ヌケヌケと出てきた大山を捕まえたが、だまされた竹さんは、その後、青森を探すときは『四国はいないか』と聞き、いないと答えると、『お前の名前は』と聞く。「俺は青森だ」と答えると、『本当か?』と念を押してみる。「本当に青森だよ」と答えると、『お前に用がある』と連れてくるオトボケ捜査を覚えた。

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