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戦後横浜野毛界隈 nogelog

大正生まれが野毛界隈を語る。

竹さんの変身

竹さん 竹さん

 体験は人を変える。検挙した犯人を取り返された悔しさは、おとなしかった竹さんを百八十度変えてしまった。いや、変えられてしまったと言った方が正確かも知れない。善良な住民を守るべき警察官が倶利伽羅紋紋の入墨に恐れおののいてどうするか。この自責の念にさいなまされた竹さんは、先輩が心配するほどの暴力警察官になっていた。あるとき、竹さんが交番の前に立って警戒する立番勤務をしていると、すし屋の屋台でチンピラが暴れているとの急報があった。竹さんは、すぐ駆け足で飛んで行った。その時代では乗物は邪魔になるだけなのだ。現場に着くと、自分で彫ったとすぐわかる蜘蛛の巣の珍奇な入墨をしたチンピラが、檜造りの立派な屋台を横倒しにして蹴り付けている。竹さんは、その男の首筋をグイと掴み、両足ばらいをした。うしろにころんだチンピラは、竹さんを見るなり、「ポリ公、そんなことしていいのか人権蹂躙だぞッ!」とわめいた。竹さんは、『ふざけるな、お前のような毒虫に人権はない。人権のあるのは、すし屋の親父さんのほうだ。』と、やり返し、それから暴れるたびに足払いをかけながら、チンピラを交番に連れて来たが、土下座してあやまらせるのに一分もかからなかった。ついに、ノロマの竹さんは泣く子も黙る都橋の竹さんに変身してしまっていた。
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