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戦後横浜野毛界隈 nogelog

大正生まれが野毛界隈を語る。

はじまり

竹さん

 この噺は、房総の一農村に生まれ、貧しい生活をおくりながらも家族の愛につつまれて、ノンビリと成長した若者が、戦後の混沌した時代に、米軍占領下の横浜の警察官になり、東洋のカスバといわれた野毛の闇市を管轄する交番に勤務し、ののしられ、こづかれながら、オイコラ警察官に変身していく物語である。


 昭和二十三年横浜市伊勢佐木警察署都橋の交番に数名の若い巡査が配置された。そのうちの一人を親しい者は「竹さん」と呼んだ。この竹さんが、横浜市巡査になった竹吉庄次である。竹さんは警察学校を卒業するとき横須賀市浦賀警察署に配置されることを希望した。それは、食い物のない時代だから故郷の房総に一番近く、ちょくちょくメシを食いに帰るのにつごうのいい警察署に配置を希望したのだが、世の中そんなに甘くない。なんと配置されたのは神奈川県で一番の繁華街を管轄する横浜市伊勢佐木警察署だったのだ。しかも、勤務を命じられた交番の管轄する町は、田舎者の竹さんをアゼンとさせた。そこは名に負う闇の町だった。なにするでもなく、ただ道路に立っている人、座っている人、夜は軒下にゴロ寝する人の多い町、それでも活気に満ちているふしぎな町、全国に名をとどろかせた「野毛の闇市」の真直中に交番があり、善良な人びとと、得体の知れない浮浪者や犯罪者がまざり住む管内一番の無法地帯から、ノロマの竹さんの泣き笑いの警察官生活がはじまった。
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