戦後横浜野毛界隈 nogelog

大正生まれが野毛界隈を語る。

2014-08-26から1日間の記事一覧

デンスケ賭博師のハイカラ老人

野毛の町に一際目立つ奇怪な老人がいた。名前を知る者は仲間内にもおらず、「じいさん」でとおっていた。噂では、十六歳位の美しい女房がいるとのことで、そのためかろうじん老人のみなりは、かなりハイカラだった。白髪頭に派手なサラサ模様のスカーフで鉢…

浮浪児たぬき

終戦後間もない野毛の町には、戦争で身内を失い、天涯の孤児となった少年がいた。「たぬき」も、その一人で愛くるしい男の子だった。「たぬき」という呼び名は子狸のように可愛かったので露店の人がつけたのだろう。年齢は六歳位だったか、ボロをまとって露…

手信号巡査

交番勤務一ヶ月で竹さんは交通巡査を命じられた。戦争中、米軍の横浜大空襲で焼け爛れた信号機の柱があちこちの交差点に立っており、動いている交通信号機は一つもなかった。占領後の米軍は、日本警察官に手信号をさせることで信号機に代えた。手信号の指導…

恐縮で始まり謝罪で終わる職務質問

交番勤務は、「立番、巡回、休憩」の繰り返しが基本だ。その目的は、管内住民の安全を図ることだから犯罪人の検挙が第一の要件となる。だが、その手段である職務質問は、「見えないものを見る」神業的技術が必要なのだ。職務質問ほど『正義感と、やる気』を…